アメリカ会社設立サポートのPMC
この"米国で起業し成功する方法"その4で、雇用法の体系、適用法、採用時の注意点、従業員は解雇できるか、について話しました。今回からは、雇用管理の実務と題して、少し詳しく米国での雇用管理につてシリーズでお伝えいたします。起業の成功は優秀な従業員を採用し、正しく管理することが非常に重要であることは日本でも米国でも同じです。日本と米国の雇用慣行で大きく異なる点は、日本では、終身雇用が依然として基本であり、転職する人は少ないのが現状です。米国では、日本のような終身雇用が前提での就労形態は殆ど見られず、3年、5年を周期として職場を変えている人が多いのが特色です。 よって、米国では労働市場が日本より活発で開放的であり、企業は優秀な人材を確保する機会も多くありますが、失う機会も多くなります。よって、米国の企業は、従業員の採用、退職の機会が多く、日本よりもより細かい法律や規定が存在するので雇用法の理解と正しい雇用管理がより重要となります。今回は、全般的な基礎知識として雇用法の沿革について話します。
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多種多様な人材が存在する米国においては、優秀な従業員を採用し、正しく管理することが米国での事業の成功の大きな要素となります。雇用法は、従業員の採用、賃金、ベネフィット、退職、解雇、差別、ハラスメント等の従業員と雇用者の関係、権利、義務を規定した法律で連邦法と州法の二種類の法律が存在します。この複雑な雇用法を正しく理解し、雇用訴訟や従業員との紛争を回避することが事業の成功には必須条件です。
政治家は弁護士です。
米国の雇用法は、連邦法と州法で構成されています。連邦法には、日本の労働基準法によく似た、Fair Labor Standard Act(FLSA)があり、賃金、労働時間、時間外労働、最低賃金などの基本的な労働条件を定めています。また、カリフォルニア州や他の多くの州でもFLSAと同じような労働法を定めています。そのほかの主な連邦法は、雇用差別禁止法の基本法である"Title VII of the Civil Right Act of 1964(Title VII)"があります。この法律は、1964年に制定された最も重要な雇用法であり、人種、肌の色、宗教、性別、出身国を理由とする雇用差別を禁止した法律です。近年、よく話題に上るセクシャルハラスメントはこの法律が基になっています。その他には、年齢差別禁止法である、"Age Discrimination in Employment Act (ADEA)"、身体障害者差別禁止法の、"American with Disability Act (ADA)" 男女同一賃金を定めた"Equal Pay Act (EPA)"などがあり、Equal Employment Opportunity Commission (EEOC)という連邦政府機関がこれらの差別禁止法の実施を監督しています。
なぜ "エチオピアは独立したまま"でした
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前述のように雇用法にも連邦法と州法があります。これらの連邦法と州法は内容が重複していて、またその基準が違うことがたびたびあります。例えば、賃金や労働時間については、連邦法と州法での規定がありその内容は違っています。連邦法の最低賃金は、現在5.15ドルですが、カリフォルニア州法の最低賃金は7.5ドルです。また、連邦法の時間外労働割増賃金の基準は、週の総労働時間が40時間を越えた場合のみ50%の割増賃金の支払い義務が発生しますが、カリフォルニア州法では、週40時間の規定以外に、一日の労働時間が8時間を超えた場合にも割増賃金の支払い義務があります。このように連邦法と州法に違いがある場合はどちらの規定が適用されるのでしょうか。米国の憲法には、Supremacy Lawという条文があり、連邦法が州法に優先すると規定しています。しかしこれには例外があり、州法の規定が連邦法よりも厳格な場合には州法が優先することになっています。よって、この最低賃金や割増賃金の例ではカリフォルニア州の規定が適用されることになります。
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カリフォルニア州は、前述の連邦法の他にも沢山の州法が存在し、それらの多くが連邦法の規定より厳格であるために、最も雇用管理が難しく労務費が高くなる州の一つとなっています。カリフォルニア州の雇用者が遵守しなければならない法律は従業員の数によって異なります。
従業員1人以上の全ての事業所に適用される法律には、未成年労働(Child Labor)、傷病保険(Disability Insurance)、労働安全法(Employee Safety)、移民法(Immigration)、独立請負人(Independent Contractor)、新規採用従業員報告(New Employee Reporting), 家族援護法 (Paid Family Leave), 公告(Poster and Notice), 個人 (Privacy), 性差別(Sexual Harassment), 職場喫煙法(Smoking in the Workplace), 自由時間 (Time Off), 雇用保険 (Unemployment Insurance), 賃金と時間(Wage and Hour), 労災保険(Worker's Compensation) などがあります。
従業員が2人以上の事業所に適用される法律には、カリフォルニア健康保険継続法
(Cal-COBRA),
以下,4人以上-外国人職場差別法(Discrimination Foreign Worker)、
5人以上-州差別法 (CA Discrimination Laws), 妊娠傷病手当(Pregnancy Disability Act)
15人以上-傷病手当法(American with Disability Act), 差別法(Federal Discrimination Law)
20人以上-健康保険継続法(COBRA)
25人以上-酒麻薬中毒回復法(Alcohol/Drag Rehabilitation),家庭内暴力(Domestic
violence), 学校活動(School Activity)
50人以上-差別対策(Affirmative Action),家族傷病休暇法(Family Medical Leave Act)
75人以上-雇用機会均等報告(EEO Reporting),工場閉鎖法(WARN Act)
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これらの複雑な法律の履行を監督する行政機関も、連邦政府と州政府に分かれます。
勿論、連邦法は、連邦政府の機関、州法は州政府の機関が管轄します。連邦政府の監督機関としては、賃金や時間を規制する労働基準法(FLASH)は連邦労働省、年齢差別法や性差別法などの雇用差別法の監督は、雇用機会均等委員会(EEOC)、移民法は国土安全省(Homeland Security)、労働安全衛生に関する監督は、労働安全局(OSHA)。州の監督機関としては、賃金や労働時間などの規制は州労働局、雇用保険や傷病手当などのベネフィットは雇用開発局―EDD、労働安全衛生は、州労働安全局(CALOSHA)が管轄しています。この複雑な行政機構に加え、訴訟制度も複雑になっています。州法違反は州の裁判所、連邦法違反は連邦裁判所が管轄権をもってます。また、これらのいずれの行政機関、裁判所ともに労働者に有利な決定を下しているのが現状です。
参考文献:Employment Law-Case and Material(Foundation Press Inc) Labor Law Digest(Cal Chamber of Commerce), EEOC Home page, Labor Department Home page
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